中堅医師が大学病院へ転職する意味とは

中堅医師が大学病院へ転職する意味とは

リスクは大きいがやりがいはある

中堅医師が大学病院へ転職する意味とは

大学病院に勤務している医師は若手医師が非常に多いですが、中には中堅クラスの経験や年齢になってから大学病院に転職する医師もいます。 どうして中堅クラスになってから大学病院に転職するのでしょう。 大学病院に転職する意味とはどういうものなのでしょうか。 詳しくご説明しましょう。

 

大学病院で働く医師の年齢層

厚生労働省が発表している平成26年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況を調べてみると、医師の勤務先として色々な医療機関がある中、病院で働いている医師の年齢構成は30代、40代、50代ともに2割程度と、どの年代にも偏りはありませんでした。

しかしながら大学病院で働く医師では、30代が突出して多く、4割以上と全く異なる傾向が出ています。

また医師の平均年齢では病院勤務医師は46.2歳ですが、大学病院勤務医師は38.7歳と平均年齢で7.5歳の開きがあります。

すなわち大学病院に勤務している医師は、一般病院と比較すると若い医師が多いことが読み取れます。

大学病院の存在意義とは

多くの医療機関がある中で、大学病院とはどのような意味を持つ医療機関なのでしょうか。

一般の医療機関は診療が目的ですが、大学病院では医学における研究や教育を主としています。

医療機関であるゆえに、診療も目的ではありますが、それよりも研究や教育に主眼を置いた機関だと言えます。

その時点でできうる最も高度な医療技術を提供しながら、新しい治療方法を臨床の場を通じて研究していくと同時に、多くの医師を養成していくわけです。

つまり大学病院に勤務する医師もこれらの目的に向かって勤務することになります。

医師が大学病院で働く意味とは

このような大学病院に勤務することは、医師にとってどのような意味があるのでしょうか。

大学病院の存在意義の項でも記述しましたが、大学病院はその時に考え得る最も高度な医療技術を提供している医療機関です。

つまり最先端の医療に医師として関わっていけるわけです。

医師として時代の最先端医療に関わることができるのは、非常に魅力ではないでしょうか。

また最先端医療を提供していることによって、一般の医療機関では手に負えない、治療できない、一般的ではない疾患などの患者が紹介状を持って来院してきます。

このような患者の治療に関わることができるのも医師にとっては大きな魅力になっているはずです。

これら以外にも、大学病院の医師は研究が重要課題であり、そのための環境や設備も整っています。

すなわち医師として医療に貢献するため、先進医療に取り組み、新しい治療法を研究しつつ、多くの医師を育てていくことができるわけです。

これらのことに対して関心が高い医師にとっては非常に魅力的な勤務先であると言えます。

大学病院勤務医の年収

では、医療に貢献したいと考える大学病院に勤務する医師の年収はどのようなものなのでしょうか。

厚生労働省が発表している平成27年医療経済実態調査によると、特定機能病院つまり大学病院全体の医業による収入と支出では赤字になっています。

また特定機能病院の中から国公立を除いた場合には若干の黒字収支になっています。

すなわち、私立大学病院は若干の黒字ということです。

これらの収支はそのまま医師の年収に反映されてきます。

大学病院の医師の年収は低く、一般的に800万円から1,000万円程度と言われています。

もちろん1,000万円は診療科医局のトップである教授の場合です。

これらと比較して民間の医療機関に勤務している医師の場合、1,200万円を超える年収を得ている医師は多く存在しています。

開業医に至っては2,000万円を超える年収の医師もいます。

つまり、大学病院に勤務する医師の年収は非常に低いのが現実です。

大学病院の医局が抱える問題点

大学病院に勤務するということは、医局に入局するということです。

大学病院の医局は以前ほどではないにしても封建的で、教授を頂点とした権力構造によって成り立っています。

そのため中堅医師が入局した場合には、自分よりも若い講師や助教授が存在している可能性もあるわけです。

その環境の中、最先端医療や研究などに励まなくてはならないということです。

また一般的に医局に在籍する医師は、同じ大学の医学部を卒業した医師がほとんどであり、他の医大を卒業して入局してくる医師は医局外様と呼ばれ、損な役回りになってしまうケースが多く見られます。

仮に、出身大学の医局に出戻ることができたとしても、一度出てしまった過去は消すことができず、医局内での損な役回りが付いて回る可能性もあります。

つまり中堅医師が大学病院に転職するということは、医局内での出世なども望みにくいだけでなく、そのまま収入にも影響してくるということでもあるのです。

中堅医師の大学病院転職は医師としてのやりがいの追求

上記のように、中堅医師が大学病院に転職するということは、医局中での処遇や収入面においてもマイナス面が非常に多くあります。

しかしながら最先端医療に触れることができ、研究にも没頭できる、後進の指導もできるなど医師としてのやりがいを追求することができます。

決して楽な道ではありませんが、リスクを十分に理解したうえで、それでも大学病院に転職したいと考えるのであれば、医師として努力してみる価値はあるのではないでしょうか。