医師が転職するための退職に際して契約書を求められた場合の対応

医師が転職するための退職に際して契約書を求められた場合の対応

退職時の契約は内容を精査

医師が転職するための退職に際して契約書を求められた場合の対応

医師は医療機関に雇用されて勤務しています。 雇用されている間は雇用主との間で交わされた雇用契約や就業規則を守らねばなりませんが、退職してしまうと雇用主との契約などは解除されることになります。 しかし、雇用されている間に知り得た医療機関の情報は多数あるでしょうし、勤務時に得た患者からの認知度や信用もあるはずです。 医療機関は、退職する医師がこれらを使って自分たちに不利益になることを行わないかを非常に気にしています。 そのため、退職にあたって契約書を交わそうとします。 どのような契約書があり、その意味はどんなものなのか、またサインするべきなのかどうかをご説明しましょう。

 

秘密保持義務

退職時に求められる契約の1つが、秘密保持義務に関する契約です。

秘密保持義務とは、医療機関に勤務していた際に知り得た医療機関の運営に関する情報、技術やノウハウなどに関する情報、人脈に関する情報などを持ち出さないこと。

その期間は最大で5年間ほどで、これらの情報を持ち出したことにより、医療機関が損害を受けた場合には損害賠償が請求できるというものです。

競業避止義務とは

秘密保持義務と並んで契約を求められるのが競業避止義務です。

競業避止義務とは、上記の「秘密保持義務」に該当する情報を駆使して、医療機関に競合する活動をさせないための契約です。

例えば、退職した医療機関と同じ商圏で同業の医療機関を開設し、勤務していた頃に得た病院運営ノウハウや医療技術を駆使されると、医療機関にとって打撃となります。それを防ぐための契約です。

契約書は内容を必ず精査する

秘密保持義務や競業避止義務は暴論で、これではその医療機関で学んだ医療技術は一切使えず、近くにある医療施設に転職もできないことになってしまうと考えるのは当然でしょう。

本来、秘密保持義務や競業避止義務については、合理的で、誰の目にも明らかな客観的事実だけにしか適用されません。

これは法律でも明記されています。そのため、契約書に該当する事例や内容が具体的に書かれており、しかも限定的な範囲でなければ効力はないと言えます。

例えば、「医療機関で勤務中に知り得た秘密は持ち出さない」といった内容の場合は具体性が乏しいと言えます。ただし院外秘が明記された資料類、パスワードが掛けられていたり、閲覧制限のあるデータ類、特定の人物のみが入室できる室内の資料類などを持ち出したのであれば、これは明らかに抵触する行為となりますが、それ以外のものは秘密にはなりません。

また競業避止義務については、競業対象となる地域や期間などが明示されている必要があります。そのため、これらの契約を求められた際には、内容を十分に精査する必要があります。

強硬な拒否姿勢は避けた方が良い場合もある

上記の通り、具体性に乏しい契約書に関しては内容を精査する必要がありますが、契約書へのサインを一律に拒否すれば良いわけではありません。

どんな内容であっても拒否してしまうことは、医療機関側が医師に対して不信感を持ってしまいかねません。

契約の内容が適正なものであれば、大きな損害を被るような競業活動や秘密の持ち出しでもしない限り、訴訟に至るリスクは低いと言えます。

しかし契約内容が適正であるにもかかわらず強硬に契約書へのサインを拒み続けると、医療機関側も疑心暗鬼になってしまい、秘密を持ち出したり、競業活動をしたりする目的でサインを拒否しているのではないか、と勘繰ってしまいます。

転職活動の支障となるような曖昧な内容や厳しすぎる内容でなければ、必要な契約書にはサインする方が良い場合もあります。

困ったら転職エージェントに相談

医療機関側から提示された契約書の内容が妥当かどうかの判断に迷うこともあるでしょう。

そこで、契約書の内容で疑問を感じたら、転職サイトのコンサルタントに相談してみるのも一つの方法です。

転職コンサルタントはそれまでの経験の中で、退職時の契約トラブルに対する知識を持っています。必要であれば法律の専門家に相談することもアドバイスしてくれます。一人で悩まずに、転職サイトのコンサルタントを頼ってください。