医師の専門医取得は転職にどれほどの影響があるのか

医師の専門医取得は転職にどれほどの影響があるのか

転職先によっては不要な資格

医師の専門医取得は転職にどれほどの影響があるのか

厚生労働省が発表している平成28年臨床研修修了者アンケート調査によると、90%以上の研修医が専門医資格を取得したいと考えているそうです。 資格の取得は義務ではないにもかかわらず、ここまで多くの研修医が資格を取得したいと考えるのは、医師にとって専門医というものが必須であると認識されているからでしょう。 しかしながら取得するためには時間や労力、費用が掛かるだけでなく、維持するのも大変です。 それほどまでして取得するのにはどれ程の意味があるのでしょうか。 また転職に際してどれほど有効なのでしょうか。

 

医療機関にとっての専門医の意味とは

医療機関にとって専門医が在籍し、勤務、診察、治療することにどんな意味があるのかを記述します。

これによって、医師の転職に資格取得はどれほど有効性があるのかを理解できるはずです。

患者に対してアピールできる

専門医が在籍している医療機関では、在籍の事実をホームページや看板、ポスターなどに記載することができます。

これは患者に対する専門性のアピールであり、専門領域での信頼感を勝ち取るために有効な手段です。

またこれによって、より多くの患者を招くことにつながる可能性が高くなります。

若手医師を獲得しやすい体制になる

専門医の存在は、研修施設として認定されるための必須要件であるとともに、指導できる体制が整っている対象であることを若手医師に広められることにもつながります。

その結果、その医療機関で研修を受ける若手医師が増え、しかも指導によって経験やスキルもアップしていきます。

これらのことができることで、医師不足に悩むことなく、若手医師を確保し、しかも長い期間勤務してもらえる確率も上がっていくことが考えられます。

専門医が診療したからと言って報酬が上乗せされる訳ではない

専門医にしか診療や治療できないということは全くありません。

医師であるなら、診療や治療は可能です。

また専門医が診療や治療をしたからと言って、特別に診療報酬が加算されることはありません。

医師採用時に経験やスキルの判断基準にできる

医療機関が医師を採用しようとするとき最も考慮するのが、経験やスキルがどの程度のものかを把握することです。

応募書類や面接などだけではこれらは判断しずらく、専門医資格があることは、一定の経験やスキルはあると判断できるため、採用時の判断基準にしやすいことが挙げられます。

専門医を必要としている医療機関とは

では多くの医療機関のうち、専門医を必要としている、すなわち専門医なら転職し易いと言える医療機関とはどのようなものなのでしょうか。

大規模医療機関

規模の大きな医療機関では、小さな医療機関と比較すると、診療科がより細かく設定されているため、勤務する医師にも専門性が求められるようになってきます。

そのため、各診療科の専門医を求める傾向が強くなってきます。

研修施設として認定を受けたい医療機関

前述したように、若手医師の研修期間として認定されるためには専門医や指導医の存在が欠かせません。

これは結果的に医師不足を解消するための方法でもありますが、それ故にもし医師を採用するなら専門医を抱えたいと考えることが一般的です。

短期間に治療まで行う必要がある急性期病院

医療機関のうち、患者が搬送されてから短期間のうちに診断から検査をし、治療までを行なわなければ患者の生命にかかわる特に急性期病院では、診療に際して専門性が求められるケースが非常に多くなります。

そのため資格が必要というよりも、特定分野に秀でた能力が求められます。

資格の有無は関係ない医療機関

転職に際して、専門医である必要のない医療機関、すなわち専門医であってもなくても関係ない医療機関とはどのようなものなのでしょうか。

民間の小さな病院やクリニックなど

医療法人や個人病院、クリニックなどでは診療科そのものが細分化されていません。

そのため一般外科や一般内科など、総合診療科的なものがほとんどです。

このような医療機関では、転職に際して専門医であるかどうかを問われることはありません。

むしろジェネラリスト的な知識や経験、スキルなどが求められるケースがほとんどです。

療養施設や老健施設など

療養施設や老健施設などの介護を主体とした医療機関では、医師に専門性は必要なく、むしろ全身状態を管理するなどの総合的な医学知識が必要になってきます。

そのため、このような医療機関では資格があるかどうかは重要ではありません。

資格取得は将来の進む道を考えて考慮すべき

専門医が転職に際してどれ程の意味を持つかを紹介しましたが、こうやって整理してみると、思ったほど有意義なものではないことが分かるはずです。

もちろん専門医であれば、資格を必要としている医療機関への転職はしやすいでしょうが、多くの医師が取得を考えている状況下では、どれ程他の医師と差別化できるかは難しいところと言えるでしょう。

医師としての知的好奇心を満足させたい心情は当然のことだと言えます。

しかしながら資格を取得することや維持するのに大変な労力や時間、費用が必要であること、ジェネラリストを求めている医療機関もあることを考え合わせると、ほとんどの医師が専門医になってしまうことに疑問も生じてきます。

決して専門医を否定するわけではありませんが、医師としてのキャリアプランをまず構築したうえで、どうしても専門医であるべきならば、取得に向けて動かれるべきではないでしょうか。

つまりキャリアプランの構築が最優先であり、とりあえず持っておくと言えるほど資格取得や維持は容易ではなく、有意義でもないことを理解しておいてください。