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少しづつ縮まっている男女格差
診療科によって差はありますが、一般的に医師の仕事は非常に激務であり、同じ診療科であれば仕事内容に男女の差はありません。 普通に考えれば、医師の収入に男女間の格差はないはずですが、現実的にはどうなっているのでしょうか。 また、もし格差があるとすれば、どのような理由からなのでしょうか。
目次
実際に、医師の収入において男女格差はあるのでしょうか。
総務省統計局が発表した平成27年賃金構造基本統計調査の中に性別年齢別による平均年収が記載されています。
このデータは勤務医だけを対象にしたものであり、クリニックや開業医のオーナー医師は含まれていません。
クリニックや開業医の年収は、一般的に高くなる傾向があるため、勤務医だけを対象にしたデータは、男女格差を比較しやすいはずです。
このデータから読み取れることは、女性医師の年収のピークは40歳代後半であり、このタイミングでは男性医師と年収にそれほど大きな差はありません。
しかしその後、年収の格差は埋まることなく推移しています。
では、医療機関の規模が異なると、男女間の格差はどうなるのでしょうか。
大規模病院や中小病院でのデータで比較してみましょう。
このデータは1,000人以上が勤務する医療機関における医師の平均年収データです。
すなわち大学病院や地域の中核を成す基幹病院などであると思われます。
これによると、50歳代前半に男女の年収差は逆転していますが、それ以外では圧倒的に男性医師の年収の方が多いことが分かります。
このデータは100人以上999人以下が勤務する医療機関における医師の平均年収データです。
この場合、中小規模の地域個人病院などが多く含まれていると考えられます。
このデータによると、女性医師の年収は大学病院などよりも平均的に多いものの、男女の年収格差は明らかに存在しています。
上記データでも女性医師の年収は、男性医師に比べて低いことが分かります。
どうして女性医師の年収は男性医師と格差があるのでしょうか。
それは女性医師のライフプランに大きく影響されているのです。
女性の場合、結婚、出産、育児と、人生における大きなイベントが控えています。
それによって、どうしても勤務できず、離職せざるを得ないケースがほとんどでしょう。
また育児期間中に復職したとしても、子供が小さいうちは当直やオンコールなどに対応することはできないため、必然的に外来担当だけなどしかできません。
子供が大きくなり、手がかからなくなってくる頃になって、やっと本格的に勤務を再開できるのが40歳代後半なのでしょう。
「全医師の性別による年収比較」でも40歳代後半に年収が一気に増えていることが、これを証明しています。
しかしながら女性医師が離職している間も、男性医師はキャリアを着々と重ねているため、医師としての経験やスキル、専門医や認定医などの資格を蓄えています。
同時に、女性医師はいずれ出産などで離職してしまうとのイメージも、医療機関に定着してしまっています。
大規模医療機関などで上位職に就くのは男性医師がほとんどであることも、これを物語っています。
そのために年収が低めに設定されているのでしょう。
では、このような医師の男女間における年収格差は今後どうなっていくのでしょうか。
厚生労働省の2015年の賃金構造基本統計調査によると、2015年の男性医師平均年収は1,237.8万円で、女性医師の平均年収は947.7万円で、その差は290.1万円でした。
しかし2017年の調査では、男性医師平均年収は1300.7万円で、女性医師の平均年収は1081.5万円と、格差は219.2万円となり、格差が縮まっています。
これは、介護や福祉の領域で女性医師の正規雇用が進んで、実質的な賃上げになったことなどが原因だと言われています。
つまり年収だけで見ていくと、少しづつ男女の格差は縮まっているのです。
高齢化によって、医師不足が深刻な状態になり、各医療機関も積極的に女性医師を採用しようとする動きが活発化しています。
また産婦人科や小児科、泌尿器科など、女性医師に診てもらいたいと患者が望むケースも増えてきています。
今後はますます女性医師のニーズが高まっていくだけでなく、それにつれて年収も確実に上がっていくことが考えられます。