ニーズは高いが医師に人気もある人工透析医への転職

ニーズは高いが医師に人気もある人工透析医への転職

好条件転職には差別化が必要

ニーズは高いが医師に人気もある人工透析医への転職

腎機能低下によって引き起こされる尿毒症を防ぐための人工透析は、腎不全などの患者にとって不可欠な治療方法です。 そのため人工透析を受けなければならない患者は、定期的にどこかの人工透析を実施している医療機関に通わなければなりません。 このような医療機関に勤務する人工透析医の転職事情はどのようなものなのか、ご説明しましょう。

 

増えつつある患者と高まるニーズ

日本の透析患者数は、日本透析医学会が調査した「わが国の慢性透析療法の現況」によると、2013年は314,438人でしたが、2014年では320,448人と6,010人増加しています。

これは人工透析の原因となる疾患として、糖尿病の合併症である糖尿病性腎症の比率が38.1%と最も高いことが理由に挙げられます。

生活習慣病の代表格である糖尿病による合併症であるため、今後も糖尿病性腎症患者は増えることが予想され、その結果、透析患者も増えていくことが考えられます。

これに伴って、透析管理ができる医師に対するニーズも高まっています。

透析医療は医療機関にとってメリットが多い

増えつつある透析患者を背景にして、透析に対応する医療機関も増えつつあります。

これは、透析患者は定期的に、しかも長期間にわたって透析を受け続けなければならないことが影響しているのでしょう。

そのため透析医療では他の診療科のように、患者を集めることにそれほど苦労することはありません。

また一度患者が透析を受けると、長い間、定期的に、同じ医療機関に通い続けることがほとんどであるため、確実に診療報酬につながっていきます。

これらによって透析医療は、医療機関にとっては月々の診療報酬が予測でき、経営面で非常に有利になってきます。

もちろん透析医療は、増えつつある透析患者という社会のニーズにも応えられます。

その結果、透析実施病院は確実に増えてきており、透析を行うクリニックは病院以上の拡大傾向にあります。

透析医療に関心を持つ医師も増加

厚生労働省の調査報告によると、透析医療にかかわる診療科である腎臓内科医師数と泌尿器科医師数は一気に増えてきています。

腎臓内科医は2014年の時点で、2008年と比較すると1332人増え、増加率は51.3%となりました。

このような増加率を示している診療科は他にありません。

泌尿器科医も2008年と2014年では、8.1%増えています。

同じ期間での医師数全体での増加率は、9.2%ですから、腎臓内科医がどれほど急激に増えているかが分かるでしょう。

これらは、透析患者の増加によって透析を実施する病院や専門クリニックが増えてきていること、そしてそれに伴って透析管理ができる医師に対する需要が高まっていることなどを若手医師が敏感に察知しているからではないかと考えられます。

人工透析医師の働き方

透析管理ができる医師が勤務するのは、病院であれば病棟透析施設となり、クリニックでは透析専門クリニックとなります。

病院の場合はシャント手術などを行なうケースもありますが、透析専門クリニックの場合は、基本的に急患は無く、入院する患者もいません。

週のうち三日ほど定期的に通う患者がいるだけですので、当直やオンコールなどもなく、勤務時間は定時で、休日も確実に休むことができます。

そのためQOLを重視したい医師にとっては非常に勤務しやすい診療科と言えます。

また病院では常勤医師が多いですが、クリニックでは非常勤医師も多く見られるなど、独特の働き方をする診療科と言えます。

透析医療に関する求人動向

透析医師は都市部、地方ともに幅広いエリアの病院やクリニックから募集されています。

病院などでは常勤医師の募集が多く見られますが、クリニックに限っては非常勤勤務での募集も多く見られるのが特徴です。

転職に際しては認定医資格の保有が有利ではありますが、ニーズの高さから、資格よりも経験重視の傾向が強いようです。

またシャント造設術や血管カテーテル治療の経験が豊富な医師は転職に際して有利に働きます。

腹膜透析の経験は、血液透析ほど管理できる医療機関が多くないためか、他の応募者との差別化にはなりますが、採用の決め手には乏しいようです。

透析医の求人数は多いですが、傾向として年収に大きな開きがあります。

年収の差は、シャントトラブルへの対応と穿刺のスキルです。

これが不要な求人の場合は、提示されている年収も低く抑えられている傾向が見て取れます。

まとめ

生活習慣病である糖尿病の患者は年々増えつつあり、その合併症である糖尿病性腎症も増えてきています。

これらの影響から、人工透析へのニーズは今後ますます高まっていくはずです。

人工透析を標榜する医療機関もそれにつれて拡大していくため、人工透析を手掛ける腎臓内科医師や泌尿器科医師にとっても、転職状況は明るいと言えます。

しかしながら転職に際して、好条件や好待遇を期待するのであれば、シャント造設術や血管カテーテル治療の経験は必須と言えます。

これらの経験が豊富な医師であれば、QOLを確保しながらも好条件、好待遇での転職も可能になってくるでしょう。

また透析クリニックに勤務することで、将来的な開業も視野に入れることができるはずです。