メリットが大きい医師の公立病院への転職

メリットが大きい医師の公立病院への転職

公務員として優遇される

メリットが大きい医師の公立病院への転職

転職する医師が勤務しようと考えるのは、ほとんどの場合、病院でしょう。 ですが、病院にも色々な規模や種類があります。 病院の中でも、地域の中核病院として位置付けられるのが公立病院ですが、このような公立病院に転職するメリットはあるのでしょうか。 またメリットがあるとすれば、それはどのようなものなのでしょうか。 公立病院への転職のメリットについてご説明しましょう。

 

公立病院とはどういう病院なのか

病院と呼ぶ医療機関は、その開設者によって区分することができます。

個人や医療法人が設立したものを民間病院と呼び、社会医療法人や公益法人だけでなく、日赤や済生会などの公的な医療機関によって設立されたものを公的病院と区分しています。

そして国や各都道府県、市区町村などの自治体によって設立されたものが公立病院と呼ばれています。

厚生労働省が2014年に発表した「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によると、全国の病院のうち、公的病院と公立病院を含めた病院数は20%ほどとなっています。

また70%ほどが民間の医療機関となっており、日本にあるほとんどの医療機関は民間のものであることが分かります。

公立病院の経営は順調なのか

医療費抑制政策によって経営が苦しくなっている医療機関ですが、その中でも公立病院の経営は順調なのでしょうか。

厚生労働省発表の「平成26年度版病院経営管理指標」によると、医療法人の医業利益率は0.8%となっており、自治体の医業利益率は-16.0%となっています。

また経常利益率は医療法人で1.5%、自治体では-1.9%になっています。

これらを見ると、民間の病院などでも決して経営が順調とは言えませんが、自治体、つまり公立病院の経営は特に厳しいものであることが分かります。

ただし公立病院には、民間病院にない税制上の優遇措置や運営資金を補填してもらえる特徴があります。

公立病院は法人税、固定資産税は非課税であり、おまけに自治体からの負担金があり、補助金も受け取ることができます。

これらによって、公立病院の経営はなんとか成り立っているのが現状です。

このような状態であるものの、地域の中核病院をなくすことはできないため、苦しいながらも経営を続けているわけです。

しかしながら、人口減少が続く自治体も決して楽な状態とは言えません。

そこで総務省は、公立病院の経営状態を改善させるための新公立病院経営ガイドラインを発表し、経営の効率化や病院の再編、経営形態そのものを見直すことをはじめとする施策を打ち出しています。

公立病院の医師の収入はどの程度なのか

公立病院に勤務する医師は公務員として扱われることになります。

また勤務する病院が国立病院であった場合には、国家公務員となります。

そのため年収は比較的高額となり、平均すると1500万円前後と言われています。

この額は平均額ですので、もちろんこれよりも高額な年収の医師もいるはずです。

公立病院勤務の場合、特に民間医療機関と異なるのが、福利厚生が充実している点です。

当直手当や夜間勤務手当、休日勤務手当などは、医師として勤務している場合には非常に厚遇されていると実感できる手当です。

また医師として勤務しているため、特殊勤務手当も受給できます。

これ以外にも、住宅貸与の仕組みがあるため、家賃は通常の場合よりはるかに低額になります。

すなわち、年収以上の数字に表れない収入があると言えます。

民間医療機関と比較した際のメリットは

では公立病院と民間医療機関を比較した際に、どのようなメリットがあるのでしょうか。

民間医療機関では利益を上げなければ、存続そのものが危うくなってしまいます。

そのために、一人の医師が担当する患者数はどうしても増える傾向にあります。

前述した「平成26年度版病院経営管理指標」によると、一人の医師が担当する外来患者と入院患者の合計は、民間の場合で17.4人、公立病院の場合は12.78人になっています。

公立病院の医師の方が余裕をもって患者と向き合うことができることが分かります。

ただし民間医療機関に勤務する医師は、仕事が激務である分、年収などに反映されるケースもあり、その場合には公立病院勤務医師の年収を超えることもあります。

一方、公立病院医師の年収は、公務員であるがゆえに、仕事量に年収が大きく反映されることはほとんどありません。

つまり、働き方そのものが民間医療機関と公立病院では異なるわけです。

公立病院に転職するということの意味と将来

上記のことを合わせて考えると、公立病院に転職するということは、民間医療機関よりも比較的余裕をもって勤務でき、なおかつ各種手当によって収入面でも厚遇されていることからもメリットは非常に大きいと言えます。

また公務員であることから、リタイア時の退職金額も多く、年金額も民間医療機関と比べると増えることになります。

これらのことから、勤務環境や収入面を考えると、公立病院が有利であることは容易に想像できるでしょう。

しかしながら2015年に改正された新公立病院経営ガイドラインでは、公立病院の経営形態の見直しや再編などの推進が明言されています。

これによって、将来的には公立病院が民間医療機関に譲渡されたり、地方独立行政法人化が進むことで、公立病院数そのものを減少させる方向に進んでいます。

その際、勤務している医師はどうなるのかは、今後の動きにも注視しておく必要がありますが、少なくとも公立病院勤務だから将来まで安泰とは言い切れない状態になりつつあることを理解しておくべきでしょう。