医師がクリニック院長として雇用される場合の注意点

医師がクリニック院長として雇用される場合の注意点

やりがいはあるが注意が必要

医師がクリニック院長として雇用される場合の注意点

経験が豊富で、スキルも十分ある、そして将来自分で開業もしてみたいと考えている医師の転職先として挙げられるものにクリニック院長職があります。 自分で開業するのではないので開業資金は要らず、医師としての手腕を存分に発揮できる勤務先です。 一般的に年収も悪くない場合がほとんどでもあるため、人気がある転職先です。 ではクリニック院長として勤務する場合、どのような点に注意しておけば良いのでしょうか。

 

オーナーの経営思想が反映されるクリニック

クリニックにはオーナーがおり、雇われ院長はそのオーナーの下で勤務することになります。

オーナーはほとんどの場合が企業であり、その経営思想に基づいてクリニックは運営されています。

そのため、オーナーがどのような企業などであるかによって、経営思想も変わってきます。

一般的にクリニックのオーナーとなっているのは、医療法人、調剤薬局、介護福祉施設などを運営している企業、一般企業、そして医師個人などでしょう。

この中でも医療法人や医師個人がオーナーである場合には、同じ医療に携わる者同士であるため、目的や経営思想は十分理解できるはずです。

調剤薬局がオーナーである場合には、クリニックの患者をその調剤薬局に誘導することで利益を得ようと考えているはずです。

そのため、調剤薬局に隣接した場所にクリニックを設けているなどがほとんどでしょう。

この場合の目的は、クリニックと調剤薬局との相乗効果による利益向上と明確なはずであり、院長職もやりやすいでしょう。

ただし調剤薬局にも大規模展開しているところや、地域限定のところ、ごく少数しか店舗を持たないところなど、色々な調剤薬局があります。

展開規模やエリア、店舗数などによってクリニック経営についての考え方も変わってくるはずですので、そのことを確認しておくべきでしょう。

介護福祉施設などを運営している企業がオーナーの場合は、基本は介護福祉分野であるため、医療に対する理解も十分あるでしょう。

しかしながら、クリニック経営を介護や福祉の考え方に当てはめてしまう傾向もあり、注意が必要です。

オーナーの中で、医師として経営思想や医療機関のあり方として疑問を感じてしまうケースが多いのは、一般企業がオーナーになっている場合です。

企業運営のクリニックなので、目的は利益の追求であり、医療に対する考え方が異なる場合があります。

転職する前に企業として医療をどうとらえているのか、クリニックはどういう目的で開業したのかなど、はっきりさせておかなければ、後々トラブルになることも多いので注意が必要です。

雇用条件にどこまでの範囲が含まれるのかを明確に

医師の転職に際しては、入職前に勤務条件を明確にしておくのが通常です。

年収や勤務時間、休日、当直やオンコールなど、細かい点まで定めておくのが普通です。

しかしながらクリニック院長の場合は、通常の場合とは異なる点が多くあります。

それは、経営そのものを任されるのか、それとも単なる診療だけを受け持つのかが大きな分岐点となります。

経営そのものを任されるのであれば、診療報酬額によって年収も変わってくるのが通常です。

大きく利益が出るなら年収も増え、利益が少ないもしくは赤字経営なら年収は少なくなります。

また経営に関して任されるということは、看護師などのスタッフも自分で選べるということであり、自分が使いやすい看護師などを採用するために動かねばならないということになります。

一方診療だけを受け持つのであれば、診療報酬額による年収の変化はないのかどうか、スタッフは全て手配してくれるのかどうかも確認せねばなりません。

ただし、経営にかかわる全てを任せてしまった場合、診療に関わる色々なことが身動き取れない状態になってしまうこともあります。

例えばどこまでの医療機器を揃えるのか、その選択はどうするのか、などは診療のあり方にもかかわってきます。

またスタッフがまるでオーナー企業からのスパイのようで、何でも報告されてしまっては息が詰まってしまいます。

雇用条件にどこまでの範囲が含まれるのかは、詳細に渡って取り決めをしておかなければ後々困ったことになるケースもあるのです。

将来的な譲渡について

クリニック院長を募集する際のセールストークに良く使われているのが、将来的に医師側が望めばクリニックの譲渡も安い金額で考えるというものです。

クリニックを開業するためには大きな費用が必要になります。

ほとんどの場合、銀行などからの借入で開業することになるため、将来的に開業を視野に入れている医師にとっては非常に魅力的な言葉でしょう。

しかしながらこれは、譲渡を、しかも安い金額で行うことを確約している言葉ではありません。

あくまでも考えるなどの表現です。

もしクリニックの経営が順調であれば、ほとんどのオーナーは、安い金額で手放すことはしないばかりか、そもそも手放すことも考えないかもしれません。

もちろん、全てのクリニックオーナーがそうとは限りませんが、実際にはセールストークでしかない場合が多いことを理解しておく必要があります。

クリニック院長への転職は条件の詳細確認と交渉が重要

クリニック院長への転職は、自分の手腕で医療機関を切り盛りできるメリットがある一方で、どのような診療方針で運営するのか、自分はどこまでのことをやるのか、できるのかを明確にしなければ、後でこんなはずではなかったと後悔することも多くあります。

転職サイトに登録すれば、コンサルタントがアドバイスをしてくれるだけでなく、細かな条件についても確認してくれます。

またオーナーとも条件面で交渉もしてくれますので、安心です。

転職サイトは勤務医として働く場合のみ有効であるわけではありません。

クリニック院長として雇用される場合でも有効なのです。